人権

取り組み方針

当社グループでは、基本的人権を尊重するとともに、事業活動を行う各国での労働者の人権に関する法令を遵守しています。また、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」において定められた労働に関する基本的権利を支持、尊重しています。 当社グループは、事業活動を行うそれぞれの国や地域で適用される法令を遵守します。

  1. 差別禁止に関する方針
    人種、国籍、宗教、性別、年齢、障がい、性的指向などに基づくあらゆる差別を排除します。
  2. ハラスメント禁止に関する方針
    セクシャルハラスメント・パワーハラスメントを含む一切のハラスメントを容認しません。
  3. 児童労働・強制労働防止に関する方針
    「児童労働」「強制労働」を認めません。当社グループでは、これまで児童労働・強制労働は発生していません。今後も児童労働・強制労働が発生しないよう、各事業所において各国の法令遵守を徹底するとともに、定期的なモニタリングを実施していきます。また、万一、違反のおそれが発見された場合に通報可能な窓口を設置しています。
  4. 「結社の自由」と「団体交渉権」を支持する方針
    「結社の自由」「団体交渉の権利」を尊重します。
  5. 最低賃金や生活資金に対する権利を支援する方針
    当社グループでは、各国の労働法令を遵守の上労務管理を行っています。賃金においても、各国における最低賃金の定めを遵守するとともに、それを上回る賃金を支払うことを基本的な方針としています。
  6. コミュニティ投資を実行するための原則及び手順
    当社グループは、地域住民や児童を含むあらゆるステークホルダーの人種を尊重し、国内外において人権を侵害しない事業活動を行います。街づくりを通じたコミュニティの形成と多様な人材の交流による新たな市場や雇用の創出に努め、事業を展開する地域にさまざまな価値を提供しています。エリアマネジメント組織への参加および支出を通して地域社会投資を行うことによって、不動産価値向上に取り組んでいます。

なお、国際的に認められた基本的人権が認められない国・地域においても、基本的人権を尊重するための方法を追求していきます。

当社グループは、以下の通り「三井不動産グループ人権方針」を策定し、人権への取り組みを推進しています。本方針はESGレポートへの記載による一般公開の他、社内ポータルへの掲載や研修等によりグループ内の周知徹底を図ると同時に、本方針に基づく「サステナブル調達基準」を定め、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の記載に則りサプライチェーンに向けた「人権デューデリジェンス」を推進しています。

三井不動産グループ人権方針

三井不動産グループは、「アンド」マークに象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、人と地球がともに豊かになる社会を目指しています。

この「アンド」マークの理念を実現していくためには、人権に配慮した事業の推進を徹底していくことが何より大切であると考え、「三井不動産グループ人権方針」(以下、本方針)を定めます。

なお、本方針は、国連が提唱する「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて策定しています。

1.国際人権基準の尊重

三井不動産グループは、世界人権宣言、国際人権規約、国際労働機関(ILO)「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」が定めた中核的労働基準(結社の自由・団体交渉権の承認、強制労働の禁止、児童労働の禁止、差別の撤廃)等の人権に関する国際規範を支持、尊重します。

2.本方針の位置づけ

本方針は、「アンド」マークの理念である「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」を可能にするためには人権に配慮した事業の推進を徹底していくことが何より大切であるという考えに基づき、人権に関する取組方針を詳述するものです。

3.適用範囲

本方針は、三井不動産グループのすべての役員および従業員(嘱託社員、パート・アルバイト等を含む、直接雇用のすべての従業員)に適用します。また、取引先に対して、本方針ならびに「三井不動産グループサステナブル調達基準」に基づき、人権に配慮した企業活動を行うことを求めていきます。

4.教育・研修

三井不動産グループは、本方針がすべての事業活動において考慮され、効果的に実行されるよう、適切な教育・研修を行っていきます。

5.人権デュー・デリジェンスの実施

三井不動産グループは、事業活動において関わりを持つさまざまな人々(ステークホルダー)に及ぼす可能性のある人権への負の影響を予め把握し、未然防止や改善などの取り組みを行います。

また、それらの取り組みの実績や効果の把握につとめるとともに、情報開示を行います。

6.是正・救済

三井不動産グループが事業活動において人権への負の影響を及ぼした場合、またはこれに関与したことが明らかになった場合は、適切な社内手続きを通じてその是正および救済に取り組みます。

また、三井不動産グループにおいて人権への負の影響を与える行為があった場合に、それについて通報・相談ができる体制の整備につとめます。

7.ステークホルダーとの対話

三井不動産グループは、本方針に基づく人権への取り組みを、さまざまなステークホルダーとの対話を通じて、より良いものに改善していきます。

8.人権への取り組みに関する重点課題

人権への取り組みに関する重点課題を本方針の別紙に記載します。この重点課題は、事業や社会情勢の変化などに応じて変わる可能性があるため、適宜見直します。

2020年12月制定
三井不動産株式会社
代表取締役社長 菰田正信

別紙
人権に関する重点課題
職場における差別やハラスメント、その他不当な扱いの禁止

人種、国籍、出身地、宗教、思想信条、性別、年齢、障がい、性的指向、性自認、学歴、結婚の有無、雇用形態などを含め、ビジネス上の職能に関係しない理由に基づく差別や不当な扱いを禁止します。また、セクシャルハラスメント、パワーハラスメントなど、職場でのあらゆる嫌がらせを認めません。

安全で健康的な労働環境の確保

労働時間や労働安全衛生などに関する法令を遵守するとともに、一人ひとりが就業に際して健康や安全面の不安を感じることなく、いきいきと働ける労働環境を作ります。

街づくりにおける安心・安全と健康への配慮

お客様をはじめ施設やサービスなどを利用する人々の安全と健康が損なわれることがないよう、徹底した品質管理を行います。また、事業活動を行う周辺地域の皆様の安全と健康にも配慮します。

事業活動におけるマイノリティへの配慮および不当な差別の禁止

事業活動において、マイノリティ(社会的少数者。例えば障がい者や外国人の方など)に配慮した施設・サービスなどの提供を行います。また、施設やサービスなどの提供に際して不当な差別を行ったり、差別を助長したりする行為を禁止します。

事業活動におけるお客様・関係者の皆様との十分なコミュニケーション

事業活動を進めるにあたり、お客様や関係者の皆様によるご理解を得られるよう、情報提供やコミュニケーションを十分に行うよう努めます。

体制

「経営会議」が当社グループのリスクマネジメント全体を統括し、そのもとで「業務委員会」が事業リスクを、「リスクマネジメント委員会」が業務リスクを、それぞれマネジメントしています。

法務・コンプライアンス管掌役員、チーフリスクオフィサー、最高法務責任者、コンプライアンスの最⾼責任者である取締役が、取締役会とリスクマネジメント委員会に所属しており、その取締役が定期的に取締役会に人権リスクを含めたリスク管理について報告しています。2020年度にリスクマネジメント委員会で取り扱った人権リスクにかかわる件数は0件でした。

現在、人権デューデリジェンスの実施拡大と並行して、内部相談窓口との連携も含めた苦情処理メカニズムの整備を検討しています。

内部相談窓口の設置

当社は、内部相談窓口を設置しています。当社正社員および個別労働契約(契約社員)・出向協定・労働者派遣契約・アルバイト契約等に基づき当社業務に従事する者であれば利用できます。社内・社外の2か所設置しており、いずれの窓口に相談することも可能です。社外窓口は弁護士事務所に設置していますが、中立的な立場※1で相談を受理し、会社に対して相談内容を連絡し対応を促すものです。

相談対象は法令・社内規程・一般的社会規範および企業倫理に反する不正等、セクハラ・パワハラ等のハラスメント、雇用問題、職場環境の課題等※2です。相談者のプライバシーは保護され、相談行為を理由とした報復行為および人事処遇上の不利益な取り扱い等を受けることはありません。また、実名でも匿名でも相談可能※3です。

※1 弁護士として法的見解を述べたり、相談者を擁護する立場に立つことはできません。
※2 単なる意見表明、人事上の不満、他人の誹謗・中傷等は相談対象にはなりません。
※3 本制度の目的であるコンプライアンス上の問題の早期把握・早期対処を行うため、匿名相談の場合にも、相談される従業員の立場等は確認します。

人権デューデリジェンスの実施

人権方針の策定にあたり「人権に関する重点課題」の絞り込みのため、「人権リスクの特定・評価」を実施しました。事業セグメント毎に、当社活動や取引が引き起こしうるステークホルダーと、人権への負の影響を抽出後、国連指導原則が求める深刻度等の観点と発生可能性からで当社特有の「重要な人権課題(人権リスク)」を絞り込み、「関係する組織の範囲」と人権リスク低減への「働きかけのしやすさ」※1から、取り組みに向けた優先度を4段階で設定しました。2021年度はサプライチェーンの代表でもある建設会社6社にアンケート、稼働中の建設現場2か所で現地検査を実施。取り組み状況を把握するとともに、リスク低減に向けた対応策・改善策を検討しました。

※1 「働きかけのしやすさ」は、取引上の立場関係、相手から見た当社グループとの取引の重要度等を考慮。例えば、当社からの委託業務が主な事業内容となっている取引先であれば、当社がその取引先に対して従業員の人権対策を講じるよう「働きかけ」がしやすい立場にあると考えます。

人権インパクト評価

人権デューデリジェンスの実施

2020年に「国連ビジネスと人権指導原則」に則り人権デューデリジェンスを実施。人権方針の「別紙」にある人権に関する重点課題を特定しました。
(詳しくは「人権に関する重点課題」をご覧ください)
https://www.mitsuifudosan.co.jp/esg_csr/society/03.html

継続的に人権へのインパクトを評価し、特定された負の影響の防止・軽減に取り組み、モニタリングしていきます。

人権インパクト評価

グループ全体(主に日本国内)の新規・既存事業における人権インパクトの評価を以下の手順にて実行しました。この評価は労働問題や健康と安全に関する人権課題も含んでいます。インパクトの評価にあたっては、弁護士で国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局次長の佐藤暁子氏にも意見をいただきました。今後も引き続き定期的に意見をいただく機会を設けていきます。

人権インパクト評価

重要な人権インパクトの抽出は、事業セグメント毎に、当社活動や取引が引き起こしうるステークホルダーと、人権への負の影響を洗い出したうえで(全202項目)、国連指導原則が求める「人権におよぼす深刻度」等の観点から、当社特有の「重要な人権課題(人権インパクト)」を絞り込みました(全42項目)。

ステークホルダーと人権への負の影響の抽出
事業セグメント
賃貸 分譲 管理運営 仲介 請負等
ステークホルダー グループ従業員 全セグメント共通(正規/非正規)
サプライヤー従業員 全セグメント共通(正規/非正規)
テナント従業員等
購入者・発注者等
(投資家含む)
建物利用者・来訪者等
地域住民・地元事業者等
「深刻度」と「発生可能性」に基づく絞り込み
発生可能性 低(10年に1回未満) 中(3年に1回未満、10年に1回以上) 高(3年に1回以上)
深刻度 高 直接 この領域に入る項目を「重要な人権課題(人権インパクト)」として抽出
間接
深刻度 中 直接
間接
深刻度 低 直接
間接

重要な人権インパクトのうち、サプライヤーにおけるインパクトの実態を把握し、インパクトの防止軽減策を検討するため、2021年に建設会社6社に対して人権を含むESGへの取り組み全体に関するアンケートと、そのうち2社の建設現場における実地検査を実施しました。
(詳しくは「社会サプライチェーン」をご覧ください)
https://www.mitsuifudosan.co.jp/esg_csr/society/04.html

アンケートおよび実地検査の結果から、人権の課題に対する理解を深めることができました。それらの課題については、今後サプライヤーとコミュニケーションを取りながら、改善に取り組んでいきます。また建設会社以外のサプライヤーに対する人権インパクトも今後調査を行っていきます。

人権インパクトの特定のためのステークホルダー・エンゲージメント(2020年10月26日、2021年8月2日実施)

人権インパクトの特定のため、弁護士で国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局次長の佐藤暁子氏にいただいた意見は下記のとおりです。グループ人権方針の策定、サステナブル調達基準の改訂、人権デューデリジェンスの実施等にあたり、いただいた意見は可能な限り反映しています。今後も「ビジネスと人権」への取り組みの推進過程で折に触れ意見をいただく予定です。

三井不動産グループの「ビジネスと人権」への取り組みに対する期待
佐藤暁子氏

佐藤暁子氏

ことのは総合法律事務所。国際人権団体「ヒューマンライツ ・ナウ」事務局次長。

現在、ビジネスと人権の問題について、人権方針、人権デューデリジェンス、ステークホルダー・エンゲージメントのコーディネート、政策提言などを通じて、ビジネスと人権の普及・浸透に取り組む。

いただいた意見:

  • 既存の業務を「人権」というフレームワークから捉え直し、日々の業務判断に人権の視点を組み込むことが必要。

  • 人権デューデリジェンスに関する情報開示において、対象の優先順位付けのプロセスを外部に開示するにあたっては、指導原則の考え方に基づきライツホルダー(人権をもっている主体)ベースで検討していることをしっかり記載・開示し、外部ステークホルダーに丁寧に説明してほしい。

  • 人権に関する法規制は多くの企業で基本的には遵守、あるいは遵守のために取り組みを進めているが、国内法遵守が「ビジネスと人権」への対応として充分なのかという点は検討が必要である。実際に日本の障害者差別解消法など、国際人権的には充分な基準ではないことが指摘されている施策が多くある。今後も国際人権基準と国内法のギャップを認識し、指導原則にしたがって国際人権基準で対応をしてほしい。

  • サプライチェーンへの取り組みについて何から着手すべきかという課題については、まずは現状国内外で課題として顕在化しているか、国際的議論として取り上げられているかが1つの視点として考えられる。例えば建設現場のコンクリート型枠の違法伐採材使用問題は撲滅を目指すNGOなどが指摘し、議論されており、不動産業もそのテーマで注目・評価されている。

  • “Black lives matter”といった人種差別の問題も国際的に人権課題として議論されていることから、国際的観点からは、自社としてのコミットメントを出していけると良い。日本企業はこの点は得意ではないことから、国際社会からは企業の社会的責任に照らし、「人権、社会問題へのコミットメントが無い」という評価になりうる。

  • 国際的には人権問題への対応に求められるレベルが、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の「マイナスをゼロにする」という原点から、さらにその取り組みがいかにポジティブなインパクトを出せるかとういう点も重視されてきているように感じる。

  • ダイバーシティ&インクルージョンの日本企業の取り組み方は「活躍の場を広げる」というポジティブ面を押し出しているが、問題の根本にある「差別の禁止」という人権リスクとして真摯に取り組んでいるということも関連付けて、ステークホルダーに理解できるように明確化すると良い。

  • 日本企業は取組が進んでいないことを開示することが苦手だが、対応できていなくても問題点を把握していることを明らかにすること自体が重要。こうした外部への情報開示が進まないと、ステークホルダーに対する透明性、説明責任が不十分として、資本市場から締め出されるリスクとなる。

主な取り組み

過度の労働および時間外労働の削減

当社では、過度の労働時間と時間外労働の削減に向けて、明確な方針を策定し、以下のような取り組みを行っています。

  • 勤務時間のモニタリングや従業員へのヒアリング
  • 長時間勤務となりうる従業員とその上長への通知
  • パソコン利用制限システムの活用
  • 「ノー残業デー」の設定(呼びかけ)

子どもの権利に対する取り組み

当社グループは、国内外における児童労働の撤廃だけでなく児童の持つ①生きる権利、②守られる権利、③育つ権利、④参加する権利を尊重します。街づくりや施設の運営を通じて、次世代を担う子どもたちを健やかに育むことは、豊かな未来の実現に欠かせないという考えのもと、事業活動やプロジェクトにおいて子どもの人権を支援するさまざまな取り組みを行っています。

子どもの権利に関連する事業活動およびプロジェクト
事業活動/プロジェクト 概要
キッザニア 子ども向け社会教育型テーマパーク「キッザニア」では、楽しみながら職業を体験し、社会の仕組みを学ぶことにより、子どもの成長と自立をサポートしています。
「未来こどもがっこう」 「未来こどもがっこう」は、柏の葉キャンパス(千葉県・柏市)で、体験型のコンテンツを提供する学びのプラットフォームです。自治体や市の教育委員会、地元の大学、地域住民が一体となって多彩なカリキュラムを実施しています。
親子で学ぶグリーンツアー 「東京ミッドタウン」では、敷地内にある「ミッドタウン・ガーデン」を親子で歩きながら樹木や花などの植物について学ぶグリーンツアーを開催しています。

人権研修

年1回の映像視聴による人権研修の他、年2回実施している全社コンプライアンス研修(e-ラーニング)にて、人権方針・サステナブル調達基準に関する社内研修(人権方針の説明等)を実施しています。