トップコミットメント

持続可能な社会の実現をめざして 三井不動産株式会社 代表取締役社長 菰田正信

グループ長期経営方針「VISION 2025」に基づいてESG経営を加速

近年、気候変動への国際的枠組みである「パリ協定」や、国際的な課題解決に向けた「持続可能な開発目標(SDGs)」など、社会課題に関する国際的な動きが加速しており、私たち企業においても、事業を通じて社会の持続的な成長に貢献していくことの重要性が一層高まっています。

三井不動産グループは、「」マークに象徴される「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」の理念のもと、人と地球がともに豊かになる社会を目指し、「」を掲げて、これまで環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を意識した事業推進、つまりESG経営を推進してまいりました。

こうしたなか、2018年度に策定したグループ長期経営方針「VISION 2025」において、当社グループが目指していくあり姿の第一に「街づくりを通して、持続可能な社会の構築を実現」していくことを位置付け、以下の6つを重点的に取り組む目標と定めました。これは、当社グループのESG経営をさらに加速させていこうという意思の表れです。

  1. 街づくりを通した超スマート社会の実現
  2. 多様な人材が活躍できる社会の実現
  3. 健やか・安全・安心なくらしの実現
  4. オープンイノベーションによる新産業の創造
  5. 環境負荷の低減とエネルギーの創出
  6. コンプライアンス・ガバナンスの継続的な向上

これらの目標達成に向けて取り組むことで、日本政府が提唱する「Society 5.0」の実現や、「SDGs」の達成に大きく貢献できるものと考えています。また、当社グループの掲げる理念や目標と通底する国際的イニシアティブの「国連グローバル・コンパクト」に賛同・署名しています。「人権、労働、環境、腐敗防止」の4分野からなる国連グローバル・コンパクト10原則を実践しながら、事業を通じて社会課題の解決に取り組んでまいりたいと思います。

街づくりを通して、
持続可能な社会の構築を実現

当社グループは創立以来、三井グループの「進取の気性」の精神を受け継ぎ、各時代のパラダイム転換を捉えて新たな価値を創造しながら、街づくりを通した社会課題の解決に取り組んでまいりました。環境共生・新産業創造・健康長寿を目指す「柏の葉スマートシティ」や、地域社会・文化の活性化に加えて地域全体の防災力強化に取り組む「日本橋再生計画」など、当社グループの街づくりは持続可能な社会の構築の一翼を担っています。また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会ゴールドパートナー(不動産開発カテゴリー)として「スポーツの力」を活用した街づくりを推進し、人々の心身の健康維持・増進と、地域コミュニティの活性化に取り組んでいます。こうした街づくりの一つひとつが、少子化・高齢化、環境問題、くらしの安全・安心、新産業創造など、社会が直面する幅広い課題の解決に寄与するものであり、「社会的価値の創出」ひいては当社グループの「企業価値の向上」へと繋がっていくものと考えております。

【環境(E)について】

エネルギー消費や温室効果ガス排出量が少ない街や施設をつくり、環境負荷の少ないサービスや施設運営を実践することで脱炭素社会の実現に貢献していくことは、街づくりを担うデベロッパーとしての社会的使命であると考えています。特に、気候変動リスクが当社グループの経営に大きな影響をもたらすと認識しており、事業を通じてリスク低減に努めることを重要な経営課題の一つとして位置づけています。

このような課題認識のもと当社は企業等に対して気候変動リスクと機会に関する情報開示を推奨する気候関連財務情報開示タスクフォースである「TCFD」の提言に賛同し、それに基づく情報開示をしております。また、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的なイニシアティブ「RE100」に加盟し、取り組みを推進しています。さらに、生物多様性や水環境の保全、環境汚染の防止および省資源・廃棄物削減といった環境に関する諸課題に対しても、オフィス・商業・住宅などあらゆる事業領域で積極的に対応しています。また、環境課題を事業機会として捉えることで、エネルギーの地産地消で省エネ・省CO2を実現する「日本橋スマートエネルギープロジェクト」などの新規事業を創出しています。

引き続き、お客様や地域社会にとって快適な環境を創出していくとともに、気候変動をはじめとする環境保全の包括的な取り組みに注力してまいります。

【社会(S)について】

当社グループは、新型コロナウイルス感染症という世界的な危機に対し、収束に向けた感染拡大の防止をESG経営の最優先課題と認識し、企業の社会的責任を果たすため、国民の命と健康を守る取り組みに率先して協力し、経済の再生も合わせて持続可能な社会の実現に向けてグループ一丸となり取り組んでいます。また、当社グループが街づくりを通して人々にビジネスライフやくらしを提供していくうえでは、一人ひとりの人権を尊重することが何より大切です。国連が提唱する「ビジネスと人権に関する指導原則」や「労働における基本的原則および権利に関するILO(国際労働機関)宣言」で定められた基本的権利を支持・尊重することはもとより、人権に配慮した事業の推進を徹底してまいります。

さらに、当社グループ内においては、意識改革・インフラ整備・組織単位での業務改革の3つを柱とする「働き方改革」に取り組み、従業員が意欲的に働ける職場づくりに努めています。人種・国籍・宗教・性別・年齢などに関わらず多様な人材が活躍できる環境の整備に加えて、育児・介護と仕事の両立支援や在宅勤務制度の導入など、ライフステージの変化に応じた多様な働き方の支援策を推進しています。

【ガバナンス(G)について】

リスクマネジメント・コンプライアンス・ガバナンスなどについては、人・街・社会からの信用に基づき事業を営む当社グループにとって、事業の根幹をなす非常に重要なテーマであると認識しています。特に、近年急速に拡大している海外事業においては、コンプライアンスの徹底とガバナンスの強化を喫緊の課題として捉えており、本社と海外現地法人のさらなる体制強化に加えて、事業リスクの適正なマネジメントやデューデリジェンスの徹底に努めております。また、グローバルな潮流、社会構造の変化、企業経営に関するステークホルダーの皆さまの意識変化などを広く見据えながら、引き続き、コーポレートガバナンスの継続的な見直し・強化に取り組み、経営の健全性・透明性・効率性を高めてまいりたいと思います。

本レポートは、持続可能な社会の実現に向けて、当社グループの企業価値をステークホルダーの皆さまにしっかりとご評価いただくために、当社グループのESGに関する方針や取り組み等について報告するものです。本レポートによって当社グループへのご理解を深めていただくとともに、今後とも変わらぬご支援、また忌憚のないご意見を賜りますようお願い申しあげます。